それでも前に向かって進むために-価値観の再構築(OGC-13)

 この年末年始、「2023年に日本は再生できるか」みたいな報道特番がよく放送されていた。だいたいどの番組も、かつて「Japan as No.1」と言われ世界経済を牽引していた我が国が、過去30年間で国力を相当低下させてしまったが、この下降傾向をどうしたら反転できるのかみたいなトーンになっていた。

 同じアジアでも、インドや中国のような人口大国は世界経済の中心にいる(今年、インドが中国を抜き世界一位の人口になるそうな)。我が国はこの2国とは勝負できていないのだが、気づけば、シンガポール、台湾、韓国などにも具体的経済指標で負けることが目立つようになった。

 マクロ経済でいえば人口動態統計が重要であるが、昨年末に出た数字が衝撃的であった。2022年の出生数が80万人を下回る見通しとなったからである。これは、4、5年前の予測を下回る減少のペースである。これまで、2050年を過ぎる頃には人口が1億人を割ると言われてきたが、さらに数年前倒しになることが現実味を帯びてきた。

 年末年始の特番では、かつての元気のあった日本を取り戻すにはどうしたらよいかと問題提起され、様々な処方箋は説明されるものの、結局は、なかなか難しい、取り戻せないのではないかという悲観論が支配的であった。

 それはそうだ。日本の社会構造が変化しない限り、1年ではもちろんのこと、5年や10年という短期的な期間ではどうにもならない。年始に「異次元の少子化対策をとる」と首相は述べていたものの、人口動態というのはなかなか急には反転しない。

 それでも前に向かって進むために、私たちはどのように考えていけばよいのか。

 本ブログで最初から言い続けてきたように、私は、現代は激動の時代で転換期を迎えているという自覚をもち、価値観を再構築する意識さえ持てば、むしろ日本の将来を前向きに捉えられると考えている。

 価値観の再構築とは何か。それは「豊かさ」に関する価値観をリセットすることだ。20世紀は、他の先進工業国と同様、日本は量的拡大を追い求めた。しかし経済成長もいつか鈍化する。究極的には地球資源が有限である以上、永遠に右肩上がりが続くわけがない。一人あたりGDPが世界3位(1995年)から27位(2022年)に落ちたことを嘆いても仕方ない。日本人は、「過去の栄光」を引き摺ってはならない。国が小さくなる歴史的必然性に抵抗すべきではないのである。そもそも、日本の国土は狭い。ひょっとするとこの島国は、人口6000万人、GDP400兆円くらいが適正なスケールなのかもしれない。20世紀の日本が膨らみすぎたという発想が必要で、国民所得ランキングよりも、幸福度ランキングの上位を目指せばよいのだと思う。

 「豊かさ」という概念を量的ではなく質的に捉えようとすること。幸い、若い世代を中心に意識が変化している。量的拡大だけでは人類は幸福にはなれないので、いまこそ日本は堂々と価値観の再構築をリードする国になればよいと考える。

 このように考えると、「取り戻すべき日本」の正体は、昭和の高度経済成長を遂げていた日本ではない。むしろ、普遍的な「日本固有の価値」を再評価することだ。別の機会に詳しく触れることになると思うが、「日本固有の価値」とは、自然・歴史への畏怖、謙虚さ、多様性・調和の尊重であり、これらは地球環境問題が危機的になっているいまの時代に、世界に発信できる(すべき)日本の強みである。我が国は有史以来、自然共生社会を実現してきた誇るべき島国である。これこそが、「取り戻すべき日本」の正体なのだと思う。

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