日本の置かれた状況-減退する存在感(OGC-11)

 前回まで地球規模の現状分析を行ってきたが、今回からしばらくは、私たちが住む日本に焦点を絞って考えていきたい。

 日本の現状は正直イケていない。

 生徒たちにこう言うとあまりピンとこないようにみえるが、それは、いまの10代が日本はイケていると思っているからではなく、自分たちの国はこの程度のものだとどこか諦観しているからだと私は思っている。

 つまり、例えば30年前と較べると日本はイケていないと言ったほうがよいかもしれない。私が学生時代、あるいは社会人になりたての頃の30年前、20年前の日本はいまよりずっと大きな存在感を持っていた。私が外交官の職を選んだのも、日本の魅力を世界に伝えてさらに存在感を大きくしたいと思っていたからである。当時、どこの国で働いても、日本人の発言は注目されていることを感じたし、仕事以外で例えば市場でふらっと歩いているだけでも、「ジャパニーズ」としつこく声をかけられたものだ。

 OECDの統計で、1988年、世界経済全体に占める日本のGDPは16%程度あり世界第2位であった。総資産時価総額の世界ランキング上位には日本企業がずらりと並んでいた。しかし現在、GDPは6%にまで落ち込み、一人あたりGDPだと20位以下まで落ちている。企業別でみても、上位30位に1社も入ってこない有様だ。平成が始まる頃には世界に名立たる経済大国であったのに、いまや見る影もない。

 この下落傾向を何とか反転させようと官民で様々な施策を打ち出してはいるものの、残念ながら、人口減少は止まらないし、再び経済大国に復活する道筋も見えにくいのが冷静な評価と言えよう。企業価値10億ドル以上で未上場、創業10年以内の企業は「ユニコーン企業」と言われ、新しい産業が成長しつつあることを示す指標としてよく取り上げられるが、その「ユニコーン企業」が米国では216社、中国では206社に対し、日本はわずか7社に留まっている。もはや米中のライバルにはなり得ず、さらに韓国、台湾、シンガポールなどからも後れをとっている。日本の産業力の凋落は明らかと言わざるを得ない。

 そして、経済大国でなければ、もともと軍事力、政治力の影響力が限定的なこの国の国際的プレゼンスが衰えていくのも無理がない。国際場裏での日本の発言力はどんどん弱まり、日本政府の外交力、日本企業の交渉力も相当低下してしまっている。(こうなると、30年前、外国で市場を歩けばしつこく声をかけられた日本人も、いまは「チャイニーズ?」「コリアン?」と声をかけられる頻度のほうが多くなっていると思う。)

 過去30年は、日本にとって、まさに「失われた30年」となってしまった。この減退感を味わっておらず、イケていた時代を知らないいまの10代、20代に罪はない。むしろ、「失われた30年」を現役で過ごしきた40代から70代のおっさんたちが、「日本はむかし凄かった、いまの若者はもう少し頑張れ」と諭す姿をときどき見かけるが、彼らに偉そうに説教する資格はないのかもしれない。

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