危機の時代への向き合い方-シン・セカイへ(OGC-10)

 地球の長い歴史に較べれば、一個人の生涯は一瞬の出来事にすぎない。だからといって、すべての人が、自分の人生など取るに足りないと諦め、未来のことを真剣に考えることを止めてしまったら、人類の将来、地球の将来は、破壊的なもの(Apocalypse)になってしまうのだろう。

 破壊的なものといえば、戦争で崩壊した都市や、洪水で飲み込まれた農村のような絵図を思い浮かぶかもしれない。しかし、人類社会全体にみられるようになっている(目には見えにくいが)、社会的不正義、不寛容、あるいは無気力という現代的特徴にも無自覚であってはならない。情報通信技術、AI技術の進歩のおかげ(せい)で、人間性疎外も進んでいる。

 今こそ、私たちは自分たちが置かれている状況をきちんと見極めるべきだ。大局観を失わずに、「全体知」をもって、子孫に希望をつないでいくための「シン・セカイ」を創造していかなければならない。

 地球環境問題への取り組みも待ったなしだ。

 40億年近い地球の生命史は、これまでに5回の大絶滅の時代を経験したと言われている。生物種の90%以上が絶えたといわれるペルム紀末の大絶滅は2億5000万年前のことだ。

 現在の地球環境はどうだろう。

 人間という動物は生態系のトップに立ち、地球上の資源を過剰に消費することで、生態系のバランスを崩す存在となっている。科学者たちは、人間という種が生態系に悪影響を与えないで生息し続ける個体数はせいぜい1000万人が限界との見識を示しているが、いまやその1000倍近くの数に膨れ上がっており、一つ一つの個体のエネルギー消費量も激増している。

 地球上の陸域の75%は人間の手によって改変され、100万種の動植物が絶滅の危機に瀕しているが、この絶滅速度は、過去1000万年間における絶滅の平均速度を100倍も上回っていることが報告されている。伐採や気候変動が原因で、生態系の拠り所である森林も凄まじい速度で失われている。1日あたり東京ドーム700個分、1年間あたり秋田県に等しい面積の森林が消失しているのだ。

 温室効果ガスの一年あたりの排出速度の伸びは、ペルム紀末の大絶滅時代よりも速いとされている。

 以上のような絶望的なデータは枚挙にいとまがなく、それだけ現代は危機的な時代なのである。したがって、いま、一個人、一企業、一国家に必要なことは、トレンド化したSDGsを標榜することではない。「beyond SDGs」、つまり抜本的な社会生活の変革が求められる。資源搾取型Globalizationから脱却し、自然環境・生物多様性の維持を科学的根拠に基づいた具体的数値で義務づける覚悟がなければ、6度目の大絶滅へとつき進むことになるだろう。

 次回からは、激動の時代、危機の時代の中で、私たちが生きる日本はどういう状況なのか、そしてどのような将来を目指していくべきなのかということを考えていきたい。

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