世界情勢の見方-国際関係の地殻変動(OGC-3)

 数年前から、国際関係の話題として「米中関係」が取り上げられることが多くなった。中国が、経済面、軍事面などを含め、総合力を急速に強めて、唯一の超大国であった米国の覇権に揺らぎが生まれている。価値観に相違のある、この二大国が太平洋を挟んで睨み合う構図は、しばらく続くのだろう。

 実力差がいまだ大きいのは事実である。中国が米国に追いつくにしても2049年頃だろうと言われていたこともあったが、この2、3年のコロナショック、政権交替、外交迷走などの米国側の失策で、両国が肩を並べるタイミングが2049年よりも早まる可能性も出てきた。

 両国の間に位置する日本にとって、米中対立の趨勢が気になるのも当然だ。地理的な問題だけでなく、経済面、安全保障面で両国との関係維持が日本の命綱であるからだ。難しいのは、安全保障面・外交面で「米国依存」が不変である一方で、経済面で「中国依存」が行き過ぎているという事実である。米中のパワーバランスに変化が生じると、日本は「又裂き」状態になってしまうというジレンマを常に抱えており、これが顕在化しないことを願うだけという厳しい状況にある。

 日本が最たる影響国であるのかもしれないが、すべての国にとって米中関係は、それぞれの国の行く末を左右する重要なポイントとなってしまっている。前世紀の米ソ冷戦のように、米中新冷戦と捉える傾向もある。

 ここで注意しなければならないのは、米中新冷戦は、米ソ冷戦とは根本概念が異なるということである。二大国が地上の権益拡大を争うような時代ではない。海上優勢、航空優先に並んで、宇宙優先、サイバー優勢の獲得が肝なのである。したがって技術競争が何よりも重要となっており、半世紀前と較べて軍事技術力も飛躍している。その結果、朝鮮戦争、中東戦争、ベトナム戦争のような局地戦が、二大国の代理戦争という形で起きる可能性は格段に小さくなったといえよう。もし起きるとしたら人類生存にとって破滅的な結果をもたらすほどに人類は「悪」を開発してきた。抑止力の効用は認めつつも、一方で、可能性がゼロではないからこそ抑止力が効くのであり、その可能性を否定できないことに人類の愚かさを感じなければならない。

 とここまで「米中関係」について述べてきたが、実は、私はそれほど関心をもっていないし、本ブログの中心テーマに据えるつもりもない。

 それはなぜか。一人の国民が、冷戦時代の米ソ関係を論じるのと同様に、現在の米中関係を外向けに論じても、ほとんど意味がないからである。もちろん、米中関係の安定に一定程度関与できる政治家や幹部官僚にはしっかり考えてもらいたいし、自社の業績が影響を受ける経済人は情勢をしっかりフォローして、必要であれば企業戦略を練り直さなければならないということはわかる。しかし、知識人ぶって居酒屋談義のように米中関係を論じることは、自己満足に過ぎない。全国民の生活に何らかの影響を与えるテーマではあるが、自分の力ではどうしようもない所与の環境変化として受け入れざるを得ないというだけの話にすぎない。

 私は、本ブログにおいて、むしろ、政官財エリートにだけ任せられない、すべての日本国民、沖縄県民が真剣に考えるべきテーマを論じていきたい。一人ひとりの力は小さいかもしれないが、それでも一人ひとりが実践しなければ変わらない、実践すればよい方向に向かう共通の課題について考えていきたい。特に、あと半世紀以上は地球上で生活しなければならない若い世代と対話していく。それが私の強い信念になっている。

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